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Q.親族からの借金がある場合の注意点は?

親族からの多額の借り入れがある場合、債権者一覧表に載せるかどうか相談を受けることがあります。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2021.7.29

それが借り入れなのであれば、載せるべきという話になります。個人再生では、すべての債権者を同様に扱う必要があります。

とはいえ、このルールを悪用すると、もちろん問題になります。

小規模個人再生が認められる過半数要件を満たすために、虚偽の借り入れを申告するようなことは認められません。

この点について、認可決定後に問題になった事案を紹介します。

最高裁判所第3小法廷平成29年12月19日決定です。

 

 

事案の概要

小規模個人再生手続で、住宅資金特別条項を定めた再生計画について、民事再生法202条2項4号の不認可事由があるかどうか争われました。


申立人は税理士。東京地方裁判所に対し、再生手続開始の申立て。

再生手続開始決定を受けました。

申立て時には、債権者一覧表を提出します。

その債権者一覧表には、所有する土地建物についての住宅ローン債権、相手方の約1160万円の損害賠償債権、申立人の実弟の2000万円の貸付債権等が記載されていました。

相手方の損害賠償請求権については、別件訴訟があり、控訴審において判決が言い渡され確定したものでした。

実弟の債権については、土地建物について、抵当権を設定した旨の仮登記がありました。仮登記を抹消後に個人再生を申立。

再生債権の額又は担保不足見込額の合計は4027万円とされていました。

 

債権届出期間に、相手方は、約1345万円の届出。

実弟は届け出をしませんでした。

債権者が債権届けをしない場合、債権者一覧表の記載内容と同一の内容で届出をしたものとみなされます(民再225条)。

本件貸付債権及び本件損害賠償債権とも、一般異議申述期間を経過するまでに異議が述べられなかったことから、実弟も相手方も、届出再生債権額に応じて、再生計画に対する議決権を行使することができることとなりました。

なお、議決権者は両名を含む10名、議決権者の議決権の総額は約3705万円。


申立人は、裁判所に対し、住宅ローン債権につき住宅資金特別条項を定めた上で、本件住宅ローン債権を除く再生債権につき90%の免除を受ける旨の再生計画案を提出。

書面決議がされ、相手方のみが本件再生計画案に同意しない旨の回答をしました。

人数でも、金額でも過半数の反対がないことから、再生計画案は、可決されたものとみなされ、認可決定が出されました。

相手方が、即時抗告。

 

高等裁判所の判断

東京高裁の原審で、申立人は、実弟の貸付債権の裏付け資料を提出するよう求められました。しかし、借用証も、金銭交付に関する資料も提出せず。

東京高裁は、申立人が、実際には存在しない貸付債権を意図的に債権者一覧表に記載するなど信義則に反する行為により本件再生計画案を可決させた疑いが存するとして、実弟の貸付債権の存否など信義則違反の有無について調査をする必要があるとして、地方裁判所の認可決定を取り消し、地方裁判所へ差し戻しました。

申立人は、抗告。

本件貸付債権は230条8項の無異議債権であるところ、再生計画案の可決が信義則に反する行為に基づいてされた場合に当たるか否かの判断に当たっては本件貸付債権が存在することを前提に判断することを要し、本件の事実関係の下において、本件貸付債権の存否について調査をする必要があるとして認可決定を取り消した東京高裁の判断には、法令の解釈適用を誤った違法があるという理由でした。

 

最高裁判所の判断

抗告を棄却するとの結論でした。

 

民事再生法231条が、小規模個人再生において、再生計画案が可決された場合になお、再生裁判所の認可の決定を要するものとし、再生裁判所は一定の場合に不認可の決定をすることとした趣旨は、再生計画が、再生債務者とその債権者との間の民事上の権利関係を適切に調整し、もって当該債務者の事業又は経済生活の再生を図るという法の目的(法1条)を達成するに適しているかどうかを、再生裁判所に改めて審査させ、その際、後見的な見地から少数債権者の保護を図り、ひいては再生債権者の一般の利益を保護しようとするものであると解されると指摘。

そうすると、小規模個人再生における再生計画案が住宅資金特別条項を定めたものである場合に適用される法202条2項4号所定の不認可事由である「再生計画の決議が不正の方法によって成立するに至ったとき」には、議決権を行使した再生債権者が詐欺、強迫又は不正な利益の供与等を受けたことにより再生計画案が可決された場合はもとより、再生計画案の可決が信義則に反する行為に基づいてされた場合も含まれるものと解するのが相当であるとしました。

 

そして、上記の趣旨によれば、小規模個人再生において、再生債権の届出がされ(法225条により届出がされたものとみなされる場合を含む。)、一般異議申述期間又は特別異議申述期間を経過するまでに異議が述べられなかったとしても、住宅資金特別条項を定めた再生計画案の可決が信義則に反する行為に基づいてされた場合に当たるか否かの判断に当たっては、当該再生債権の存否を含め、当該再生債権の届出等に係る諸般の事情を考慮することができると解するのが相当であるとしました。

 

本件貸付債権は、抗告人が本件再生手続に係る再生手続開始の申立てより16年以上前にその実弟から2000万円の貸付けを受けたことにより発生したというものであり、本件仮登記が経由されたのは、別件訴訟の提起後で上記貸付けの時から14年以上を経過した平成25年12月であって、抗告人は、原審において本件貸付債権の裏付けとなる資料の提出を求められながら、借用証や金銭の交付を裏付ける客観的な資料を提出していないなど、本件貸付債権が実際には存在しないことをうかがわせる事情があると指摘。

そして、本件貸付債権については一般異議申述期間内に異議が述べられなかったため、実弟は議決権の総額の2分の1を超える議決権を行使することができることとなり、本件再生計画案が可決されるに至っているとしました。


以上の事情によれば、本件においては、抗告人が、実際には存在しない本件貸付債権を意図的に債権者一覧表に記載するなどして本件再生計画案を可決に至らしめた疑いがあるというべきであって、抗告人が再生債務者として債権者に対し公平かつ誠実に再生手続を追行する義務を負う立場にあることに照らすと、本件再生計画案の可決が信義則に反する行為に基づいてされた疑いが存するといえるとしました。

しかるに、本件再生計画案の可決が信義則に反する行為に基づいてされた場合に当たるか否かについて、本件貸付債権の存否を含めた調査は尽くされていないと結論づけています。


不認可に関する平成20年決定

再生事件の不認可事由の解釈について、最一小決平20.3.13があります。

本件でも参考にされているものです。ただ、この平成20年決定は、個人再生手続ではなく通常再生手続の事案でした。

平成20年決定は、頭数要件を満たすことを目的として再生債権の一部譲渡がされたという事案です。

債権者の人数を増やして賛成者を増やそうとした事案といえます。

これに対して、本件では、頭数ではなく、金額における過半数債権の有無が問題になっています。

ここで、虚偽の債権届出があれば「不正の方法」に当たるのではないかが問題とされたものです。

手続内確定

ここで、一つの問題とされたのが、実弟の債権について、個人再生手続きでは異議が出されなかった点です。

そこで異議が出ていれば評価などの手続きに進んだものと思われます。

異議が出されないので、手続き内では確定しています。

ただ、個人再生の場合、債権額の確定は、手続内確定であり、後に争われる可能性もあります。実体法として確定するものではないのです。

ここで、債務者の行為が信義則違反となるか、その検討時に、異議が出されずに手続内確定した再生債権について考慮できるのか問題になったのです。

最高裁は、これを考慮できるとしたものです。

親族の債権者が過半数の金額というような場合には、裁判所でも調査されます。

それが真実であれば、そのような債権者一覧表を作成すべきですが、ときにはこれを理由に個人再生委員の選任・調査という手続きになる確率も高まるでしょう。

今回のケースでは、高裁で資料の提出もなかったことから、疑いを持たれてしまっています。

申立人が税理士さんという点も、事実上は影響していそうに感じます。

多重債務者の個人再生申立では、親が借金を過去にまとめているようなケースもあり、そのようなケースでは、贈与でなく貸付であれば、債権者一覧表に記載すべきであり、本件とは違うのではないかと考えます。

 

文責:弁護士石井琢磨(神奈川県弁護士会所属28708)

 

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