ケース紹介
法人代表者の個人再生ケース紹介
ケース紹介147 Kさんの事例

横浜市旭区在住 ( 会社員 / 40代 / 男性 )
借入の理由:法人保証、オンラインカジノ 債務総額4091万円
法人破産をしても、代表者個人名義の借金や保証債務は自動的には消えません。
この記事では、法人破産後に代表者が個人再生を利用し、自宅を残しながら借金を大幅に減額した事例をもとに、住宅資金特別条項、個人再生委員の審査、返済期間延長のポイントを解説します。
会社が破産したあとの法人代表者の個人再生・解決事例

「会社を畳んだのだから、自分の借金もこれで終わりのはずだ」--
そう思っていたのに、法人破産の手続きが終わったあとも、代表者個人には借金が残っている。そんな状況に戸惑う経営者の方は少なくありません。
法人破産と個人の債務整理は別の手続きです。
会社が消滅しても、代表者個人が背負った借金はそのまま残ります。保証人になった責任も同じです。
今回は、法人破産後に代表者個人が個人再生手続きを行い、借金の9割近くを減額してもらった事例をご紹介します。

なぜ法人代表者に個人の借金が残るのか
会社の資金繰りが厳しくなると、代表者は会社のためにさまざまな形で個人の信用を差し出します。
金融機関からの借入に個人保証をつける、事業資金を代表者個人名義のカードローンやキャッシングで工面する、といった形です。
今回の相談者も、経営していた会社の資金繰りのために、複数のクレジットカード会社や消費者金融からの借入を重ねていました。
会社は最終的に支払不能に陥り破産しましたが、破産手続きの対象は法人の財産と法人名義の債務に限られます。
代表者個人の名義で借りていた分や保証債務は、法人破産が終わっても消えずに残りました。
さらに今回のケースでは、オンラインカジノへの浪費も借金が膨らんだ一因になっていました。
会社の資金繰りに追われる中で、ギャンブルによる一発逆転を期待してしまう経営者の方は珍しくありません。
個人再生では、浪費やギャンブルの経緯があっても、それだけで手続きが利用できなくなるわけではありません。ただし、裁判所や個人再生委員に事情を正直に説明し、収支を明らかにすることが求められます。

破産ではなく個人再生を選んだ理由
会社が破産したのだから、代表者個人も自己破産すればよいのでは、と考える方もいます。
しかし相談者には自宅不動産がありました。住宅ローンを組んで購入した自宅を手放したくないという強い希望があったのです。
個人再生には「住宅資金特別条項」という制度があります。住宅ローンをこれまでどおり支払い続けることを条件に、住宅ローン以外の借金だけを大幅に減額できる仕組みです。
自己破産では自宅を含めた財産を手放すことになりますが、個人再生であれば自宅に住み続けながら借金を整理できます。相談者はこの制度を利用するために、破産ではなく個人再生を選択しました。

個人再生委員による審査
今回のケースでは、横浜地方裁判所に小規模個人再生を申し立てたところ、法人代表者であったことやオンラインカジノ支出があったことから、個人再生委員が選任されました。
個人再生委員とは、裁判所から選任され、申立人の家計や資産の状況が正確かどうかを調査する弁護士のことです。
法人代表者が個人再生を申し立てる場合、次のような点が特に厳しく確認される傾向があります。
・法人破産事件の記録一式→破産手続きの経緯が個人の債務や財産にどう影響したか
・自宅不動産に対する仮差押えなど、法人の債務保証に関連する担保権の有無と経緯
・親族からの借入の有無と、借用書などの裏付け資料
・浪費やギャンブルがあった場合の収支の詳細(入出金の全ルートの洗い出し)
・子どもの進学予定や家族のアルバイト収入など、将来の家計変動の見込み
今回の相談者にも、これらすべてについて資料の提出と説明が求められました。
個人再生委員からの照会は一度では終わらず、面談と書面のやり取りを重ねながら半年以上かけて審査が進められました。
法人代表者の個人再生は、会社員の個人再生に比べて確認事項が多く、手続きが長期化しやすいという特徴があります。

再生計画案の内容??減額幅と返済期間
審査を経て確定した相談者の負債は、住宅ローンを除いて約4,000万円でした。
これに対して、再生計画による返済総額は約500万円。確定した債権額の87.63パーセントにあたる金額が免除される計画です。
この減額幅は、個人再生の「最低弁済額基準」と「清算価値保障原則」という2つのルールのうち、金額の高いほうを弁済総額とする仕組みから導かれたものです。
清算価値保障原則とは、自己破産した場合に債権者が回収できたであろう金額以上は返済しなければならないというルールです。
相談者の場合、保有資産や収入の状況を踏まえたうえで、約537万円という返済総額が確定しました。

返済期間についても、当初の予定から変更がありました。個人再生の返済期間は原則3年ですが、民事再生法229条2項2号は「特段の事情」があれば5年まで延長できると定めています。
相談者のケースでは、約537万円を3年で返済すると月々の負担が約15万円になる一方、家計の余剰はそれよりも少ない状態でした。
そこで裁判所に上申書を提出し、返済期間を5年に延ばすよう求めました。5年に延長すれば月々の返済額は約9万円まで下がり、家計の余剰の範囲に収まります。
加えて、子どもたちが公立の中学校・高校に進学する予定で、今後大きく教育費が増える見込みがないことも、5年での返済が現実的だと判断される材料になりました。裁判所はこの上申を認め、5年分割の再生計画が確定しています。

このケースから分かるポイント
法人代表者が個人再生を検討する際は、次の点を押さえておくと手続きの見通しが立てやすくなります。
【ポイント1】法人破産と個人の借金整理は別の手続きとして考える
会社を破産させても、代表者個人名義の借金や連帯保証債務は自動的には消えません。法人破産の手続きと並行して、個人の債務整理をどうするか早めに検討する必要があります。
【ポイント2】自宅を残したいなら個人再生の住宅資金特別条項を検討する
自己破産では自宅を手放すことになりますが、個人再生の住宅資金特別条項を使えば、住宅ローンを払い続けながら自宅に住み続けられます。
【ポイント3】法人破産に関連する資料は早めに整理しておく
個人再生委員は、法人破産の記録や不動産の担保関係など、法人と個人にまたがる事情を細かく確認します。破産事件の記録一式をすぐに提出できるよう、手元に整理しておくと手続きがスムーズです。
【ポイント4】返済期間は3年が原則だが、5年への延長も選択肢にある
3年での返済が家計にとって重すぎる場合、5年への延長という選択肢があります。ただし延長には「特段の事情」を裁判所に示す上申書が必要です。弁護士と相談しながら、家計の実態に見合った返済計画を立てることが重要です。

オンラインカジノ・ギャンブルと清算価値
最近の横浜地方裁判所では、弁護士に依頼する前、一定期間のギャンブル損失、浪費を個人再生の清算価値に加算するよう指示されるケースが増えています。
本件でも、そのような指示がされました。
しかし、依頼者が利用していたオンラインカジノのサイトでは、月単位の履歴といったこまかな表示ができず、月ごとの正確な収支を把握することができませんでした。
また、出入金についても、銀行口座やクレジットなど複数の方法を用いているうえに、代行業者等を介して入金していることからオンラインカジノへの入金を特定することも困難でした。そのため、収支に代えて出入金を集計することも困難でした。
再生委員との協議を踏まえ、金融業者から借り入れてオンラインカジノに使用した約1300万円のうち、5%について清算価値に計上することとしました。
月ごとの使用額を集計するのであれば、申立人の記憶による他なく、記憶による月ごとの使用額を一応説明しています。

自宅不動産への仮差押え
自宅に対し、法人の債権者である信用保証協会による仮差押登記がされていました。
受任通知を送付した約2ヶ月後にされています。もっとも、法人の破産申立後に取り下げられています。
個人再生の準備中に仮差押をされる事例もあります。特に神奈川県信用保証協会を含む保証協会でよく見かけます。
仮差押えはするものの、訴訟提起にすぐ移る事例は少なく、予定どおりに個人再生手続きが進めば、取り下げられることがほとんどです。そのため、手続きへの影響は少ないでしょう。

まとめ
法人代表者の個人再生は、法人破産事件との関連性の確認や資産の精査など、通常の個人再生よりも審査項目が多くなる傾向があります。
今回の事例では、半年以上にわたる個人再生委員とのやり取りを経て、約4,000万円台の負債の87.63パーセントが免除され、住宅を残しながら5年間で返済していく計画が認可されました。
再生計画案による減額
住宅ローン以外の借金部分については4091万円の借金が537万円まで減額されています。
少額の支払は一括支払を利用しているため、毎月の返済額は約8万5000円となっています。

会社の破産後に個人の借金が残ってお困りの方はぜひご相談ください。











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