個人再生のリース物件の注意点、弁済協定の解説。神奈川県厚木市・横浜市の法律事務所が管理しています。

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FAQ(よくある質問)

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Q.個人再生でのリース物件の扱いは?

自営業者の個人再生で、リース物件が問題になることがあります。

そこで、リースは、レンタルや賃料とは異なり債務になるので、支払い停止、引き揚げになるのが原則だからです。リース物件の原則的な取り扱いと、弁済協定により残せる可能性について解説します。

  • 自営業者で個人再生を検討中
  • リース物件がある

という人に役立つ内容です。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2022.9.16

 

個人再生のリース問題

自営業者の個人再生で問題になる点として、リース債権があります。

事業に必要な機具等をリースしている場合です。

リース会社との間で、機械や什器、自動車等についてリース契約をしていることがあります。

多い人だと、複合機、セキュリティ危機、パソコン、車、など複数のリースを組んでいることもあります。

 

不要なリースの精算

リース物件を利用しない、不要だという場合には、大きな問題になりません。

通常、リース料の支払いを止めた場合には、リース会社からの一括での請求権が発生します。

リース物件が引き揚げられ、売却、充当後の金額が請求されます。

これを債権者一覧表に記載し、他の債権と同じように減額の対象としていくことになります。

高額なリース契約の場合には、リース債権が、個人再生での過半数要件に引っかからないかを意識しておく必要はあります。これは他の債権者と同じような話です。

悪質リース商法の被害に遭ったりして、他の借金と合わせて個人再生をすることもあります。

問題は、リース物件を残したい場合です。

 

リース料の支払停止と引き揚げ

リース契約では、リース物件の所有権はリース会社にあります。

ユーザーがリース料の支払を止めると、リース会社はリース物件を引き揚げます

その後、これを換価して債権に充当し、未回収分が再生債権とされるのが原則です。

ローンで買った所有権留保つきの車と同じような流れです。

リース債権が再生債権になると、再生手続開始決定がされることで、リース契約の約款上は解除事由になってしまい、リース契約は解除され、リース物件は引揚げられてしまいます。

リース物件を残したいとなると、まず、リース料の支払は続ける必要があります。

ただ、個人再生手続では、原則としてすべての支払を止めることになります。そこで、例外的な対応ができないかを検討する必要があります。


 

リース債権と別除権付債権

民事再生法上、リース債権の法的な性質は別除権付債権とされています。複合機などに多く使われる一般的なフルペイアウト方式のファイナンス・リース契約によるリース債権は別除権付債権に該当するというのが判例の立場です。

リース物件を担保に取っている権利ということです。不動産の抵当権設定債権などと同じ扱いです。

リース債権は、月額の支払であることから、レンタル費用のように考えている人も多いですが、法的には、リース契約の成立と同時に、全額について発生しています。リース料の支払が毎月の金額に決められているのも、ユーザーに対して期限の利益を与えているだけ、分割払いにしているだけに過ぎず、債務としては全体額を負っていることになります。

 

別除権とは

別除権とは、破産や民事再生で使われる言葉です。

民事再生法では、別除権は再生手続外で実行できる権利とされています。

抵当権のように担保を取っている場合には、破産手続きや民事再生手続きがあっても、独自に、別の動きで担保権を実行することができるという権利です。抵当権であれば競売申し立てができます。

このような別除権が、事業に欠かせないリース物件についていると、事業が成り立たなくリスクがあります。

 

リース債権と債権者一覧表

個人再生の申立時には、債権者一覧表を提出します。

その際、別除権付債権は特別な記載をします。

別除権を行使していない、つまり、引き揚げていない状態のリース債権では、債権者一覧表には担保不足見込額を記載するのです。リース物件を引き揚げて売却しても、足りない部分が、再生債権として弁済対象になります。

別除権協定、弁済協定を締結する予定の場合には、後に共益債権として取り扱うことになります。ただ、個人再生の申し立て時点で、債権者一覧表を提出する際は、まだ共益債権にはならず、再生債権と同様の取り扱いとなります。

その後、裁判所と協議し、弁済協定を締結したとしても、リース会社が届出債権の取下げをしないことも想定されるので、債権者一覧表では異議を留保しておくのが一般的です。

 

 

リース債権と5000万円要件

このように別除権付きの債権とされることから、個人再生の5000万円要件でも、他の別除権付き債権と同じ扱いとなります。

つまり、リース物件で担保されていない、不足する金額のみが、5000万円要件の金額にカウントされます。

リース会社との間で、別除権協定を締結しない場合には、リース物件の時価評価額を裁判所に示す必要があります。

担保の行使前、つまり、リース物件の引き揚げ前に個人再生の申立をしたのであれば、この評価額で不足する部分の債権額を、他の債権に加算し、5000万円以下かどうかを判断することになります。

 

 

リース債権と弁済協定

リース物件を残すためにはリース料の支払をしなければなりませんが、個人再生ではすべての債務の返済を止めなければなりません。そこで、例外的な対応となるのが、別除権協定、弁済協定と呼ばれるものです。

リース物件が引き揚げられると事業自体ができなくなることがあります。

そうすると、事業収入が止まり、自営業者の個人再生はできなくなってしまいます。

一般的には、個人再生の申立を裁判所に行い、再生手続開始決定が出ると、再生債権の弁済は禁止されます。

リース会社への支払を止めると、別除権が行使され、リース物件が引き揚げられてしまいます。

これを避けるため、リース物件が再生債務者の事業にとって必要不可欠の場合には、弁済協定を締結することが認められています。別除権協定と呼ばれたりもします。

運送業での車などは、このような弁済協定が認められやすいです。

 

個人再生でリース料を支払う根拠

弁済協定を結んだ債務については、再生手続開始後の再生債務者の業務および財産の管理に関する費用の請求権(法119条2号)や再生債務者の財産に関し再生債務者等が再生手続開始後にした資金の借入れその他の行為によって生じた請求権(法119条5号)に該当するという理屈で、共益債権として支払うことになります。

リース物件があるから、事業での収益が出るのだから共益債権になるというロジックです。

別除権の受戻しと表現されることがありますが、担保目的物の受戻代金を共益債権として扱うという内容になるでしょう。

 

個人再生の弁済協定と許可

弁済協定の締結は、民事再生法では裁判所の許可事項となる場合もありますが、個人再生では、許可事項と指定はされていません。

もっとも、必要性のないリース料を支払うと不認可事由になってしまうことから、裁判所への事前報告等が必要だとされています。

通常は、個人再生の申立と同時に別除権協定に関する上申書を出すことになるでしょう。

 

通勤用の車は厳しい

以上のように、リース料の支払は、事業に不可欠のため特別に支払う例外的な対応です。

個人再生の利用者の中には、自動車ローンだけは外して車を維持したいという声も強いです。

事業用の車であれば、弁済協定の余地がありますが、会社員の通勤用の車ではなかなか認められないのが実情です。

複数の文献で、通勤用の車では弁済協定は認められないと書かれています。

 

別除権協定における物件評価

民事再生手続きにおける別除権協定では、通常、リース物件などの対象物件を評価します。

そして、その評価相当額を別除権者に対して、再生計画とは別に分割して支払うことを合意します。

それ以外に、分割の支払がされていれば、別除権者は別除権の行使をしない、物件の引き揚げ等をしないことの誓約、全額の支払がされたら、担保権の解除をすることを記載します。

なお、リース債権などの被担保債権が、対象物件の評価額を超えてしまう場合には、不足額は再生債権となります。

つまり、リース物件等の評価額を上回る部分については、担保がない債権なのだから、再生債権となり、減額の対象になるわけですね。

このため、対象物件の評価額が極めて重要になってきます。リース債権者などは、一部でも減額されるなら、引き揚げを主張してくるリスクがあるからです。

別除権協定は、車のほか、一部の住宅を担保とした債権(住宅ローン条項が使えない場合)でも検討されるのですが、この評価の問題で断念することも多いです。

複数の条件がピッタリ合うと個人再生でも活用できるのですが、そう簡単にはいきません。

 

 

再生計画案における別除権協定の記載

リース料などを別除権協定で支払う場合、再生計画案では共益債権の項目欄に記載することになります。

一般的な別除権協定の条項は次のようなものです。

共益債権及び一般優先債権(未払分は、次のとおり)は、随時支払う。

○○株式会社のリース料債権については、令和○年○月○日締結の弁済協定により令和○年○月から令和○年○月○日まで、毎月末日限り○円ずつ、合計○円を支払う。

返済計画表の確定債権額欄などには、「弁済協定締結」と記載しておくことになります。

 

別除権協定に関する裁判所への上申書

裁判所に出す別除権協定に関する上申書には、次のような記載をします。


令和○年(再イ)第○○号
上申書
令和○年○月○日
横浜地方裁判所小田原支部 御中

申立人代理人弁護士○ 印

再生債権○○株式会社(以下「リース会社」という。)と申立人との間における、リース契約に基づくリース料債権について、債務弁済協定を締結したく上申する。

弁済協定を締結する理由

ここには、事業内容とリース物件の必要性を記載することになります。具体的な支払を記載するので、リース契約の内容特定(契約書などがあれば添付、抜粋)をしておきます。

たとえば、

申立人は、経貨物自動車による運送業を営んでいます。

申立人とリース会社との間の令和○年○月○日付けリース契約では、申立人が業務に使用している軽貨物自動車(以下、「リース物件」という。)が対象とされています。

申立人は、リース物件の稼働により月○万円の売上を上げているものの、リース物件を返却した場合には、事業継続が困難となり、継続的な収入を得られなくなる見込みです。

リース会社との間では、別紙弁済協定案について事前に内諾を得ています。

同支払については、事業収益から可能であることが見込め、かつリース物件を継続的に利用できることから、再生計画に基づく返済が可能となる見込みです。

以上の通りですので、リース会社との間でリース料債権を共益債権とするため弁済協定を締結したく上申をする次第です。

 

別除権協定、弁済協定書の書式

リース会社との間で作成する別除権協定、弁済協定の書式は簡単なものであることがほとんどです。


弁済協定書のようなタイトルで、個人再生の事件番号を特定したうえで、

当事者間の従前の法律関係を変更することについての合意と記載。

本文としては、別紙等で特定したリース物件について、支払方法及び引き揚げがないことを記載する程度です。

たとえば、当事者で、リース会社を甲、ユーザを乙とした場合には、

乙が本協定書記載の義務を履行しない場合を除き、甲は乙によるリース物件の使用継続について異議を述べず、別除権の行使として本件リース物件の引き揚げをしないことを確認する。

甲と乙は、令和○年○月○日現在における本件リース物件の時価評価額(以下「本件別除権額」というが○円であること、その結果、別除権不足額が0円であることを合意する。

乙は、本件リース物件について、甲に対し、令和○年○月から令和○年○月まで、毎月○日限り、金○円を送金して支払う。

という程度のものです。

 

弁済協定条項と牽連破産対策

実務上はほとんどありませんが、個人再生の申立をして、要件を満たさない、事情が変わったなどの場合に、牽連破産となることがあります。破産手続きに移行するものです。

この場合、弁済協定の内容によっては問題が生じます。

弁済協定に基づく債権だと、牽連破産手続では財団債権とされる扱いです。そうすると、他の債権者への影響も大きくなってしまいます。

そのような事態で責任追及されないためにも、弁済協定の中に、牽連破産に移行した場合には協定が無効となるとの条項を入れておき、牽連破産手続では別除権付破産債権として取り扱うようにする対策が考えられます。

牽連破産自体は少ないですが、万一のことを考えるなら、別除権協定の際に、このような条項を入れるよう交渉するのも一つの方法でしょう。

ジン法律事務所弁護士法人では、解除条件条項を盛り込んだ事例があります。

甲と乙は、本件再生手続において、再生計画認可決定の効果が生じないこと、再生計画不認可決定が確定すること、または再生手続の廃止決定がなされることを解除条件として本書の協定を締結する。

 

別除権協定締結の事例

自営業者で別除権協定が利用された事例として、裁判所から説明されているものもあります。

喫茶店経営者でが、厨房機器等をリース契約に基づいて使用していた事例で、別除権協定の締結事例があります。

東京地裁の事例で、再生債務者はが、リース会社との間で、リース会社がリース物件を引き揚げない、残リース料をそのまま支払うという内容の弁済協定を締結しようとしたものの、個人再生委員から指示され、リース物件の利用権相当額のみを対象として分割して支払う内容に修正されたというものが報告されています。

 


リース債権を含む個人再生については、事例豊富なジン法律事務所弁護士法人に、ぜひご相談ください。

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